本ドキュメントでは、ギムノカリキウム属の進化に伴うさまざまな変化について考察します。 植物のサイズ、根の構造、トゲの特性、果実と種子の変化など、進化の過程でどのようにこれらの特徴が変化してきたのかを詳しく見ていきます。 また、これらの変化がどのように環境への適応と関連しているのかについても触れます。 1. 植物のサイズの変化 ギムノカリキウム属の祖先は、原始的な柱サボテンの形質が維持された樽型で単独の生育形態を持っていました。進化に伴い、これらの植物は球状で単独、もしくは群生する形態へと変化し、全体的に小型化する傾向が見られます。 新天地(Gymnocalycium saglionis) 新天地は最も古い形質を持った始祖的なギムノカリキウムです。 他のギムノカリキウムと比較して大型に成長することが特徴です。 鳥などの脊椎動物を惹きつけ、種子散布に貢献する色鮮やかでジューシーな果実を持つことが特徴です。 アルゼンチン北西部の山岳地帯に生育しており、ギムノカリキウム属の祖先型がこの地域に起源を持つ可能性を示唆しています。 2. 根の変化 初期のギムノカリキウム属は、少量の雨量に適応した浅い網状の根を持っていました。 しかし、進化の過程で水分や栄養を効率的に蓄える、乾燥にも耐えることができる紡錘型の塊根を持つ種が出現しました。 【ギムノカリキウムの根の進化に関する補足】 網状で浅い根は、サボテンにおいて、浅い雨が土壌の表層部分にのみ浸透する環境に適応するための特徴として記載されています。また、表皮上で結露した水滴を吸収する機能も持ちます(Gibson & Nobel, 1986)。 この特徴は、ギムノカリキウム属の基部系統(原始的な種)に維持されています。 一方で、紡錘型の塊根(ナピフォルムルート)は、水分やデンプンの貯蔵と関連しています(Nobel, 2002)。このタイプの根に含まれる水貯蔵組織は、高度な脱水に耐える能力があり、不可逆的なダメージを受けることなく回復できます。 また、乾燥時の水分損失を防ぎ、根の収縮を抑制する働きもあります(Nobel, 2002)。 ギムノカリキウム属の末端系統(進化が進んだ種)では、独特で多肉質の根を発達させる傾向が見られます。 特に、トリコモセミネウム亜族(Trichomosemineum)やギムノカリキウム(Gymnocalycium)亜属に属する種で顕著です。 ギムノカリキウム・リオジェンセ・パウシスピナム VG347a (Gymnocalycium riojense ssp. paucispinum VG347a) 塊根を持つ、新しい形質のギムノカリキウム。 お椀型の種子を持つトリコモセミネウム亜族(Trichomosemineum)に属しています。 3. トゲの変化 初期のギムノカリキウム属は、強く鋭いトゲを持っていましたが、進化後にはトゲが小型化し、減少する傾向が見られます。これにより、無害化が進んでいると考えられます。 4. 果実と種子の変化 初期のギムノカリキウム属は、鳥・ネズミによる種子散布を促すために、目を惹く色鮮やかで、かつジューシーな風味をもつ果実と、小さな種子を持っていました。 しかし、進化後にはアリによる種子散布に適応し、乾燥した緑色の果実と大きな種子を持つ種が出現しました。 【補足】ギムノカリキウム属の果実と種子の進化に関する傾向についての詳細
ギムノカリキウム・羅星丸・グラウカム VG471 Gymnocalycium bruchii v. glaucum VG 471 :Argentina: Los Reartes, Cordoba, 803m ギムノカリキウム(Gymnocalycium)亜属に属する羅星丸。 種子は大型で、かつ球体は群生し、小型。 非常に新しい形質を持ったギムノカリキウムと言えそうです。 進化の要因 これらの変化は、ギムノカリキウム属が温暖な環境から冷涼な環境へ適応する過程で生じたと考えられています。 環境の変化に応じて、これらの植物は生存戦略を変化させ、進化を遂げてきたのです。 【参考文献】
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